そもそも規格とは何?
製品やサービスの品質や安全性を確保・標準化し、国際間での取引や使用時の互換性を保つために「規格」は存在します。
- 品質管理と安全性の確保: 製品やサービスには一定の品質基準が必要になり、規格はこれらの基準を定め、製品が安全かつ適切に機能することを保証している。
- 国際間での取引の促進: 規格は国際間の取引を円滑に進めるために重要で、規格が統一されていれば、製品やサービスが異なる国で使われても問題が生じにくくなる。
- 技術革新の推進: 規格は技術革新を促進するためにも役立ち、共通の基準があれば、新しい技術や製品をより迅速に導入することができる。
- 環境保護と持続可能性の促進: 規格は環境への影響や持続可能性に関する規定も含んでおり、環境への配慮を促進し、持続可能な社会がつくられる。
- 製品の比較と選択の支援: 規格があれば、同じ種類の製品を比較しやすく、消費者は製品の性能や品質をよりよく理解し、適切な製品を選択することができる。
規格の種類
ロープアクセスで使用する道具でよく目にする規格には以下のようなものがあります。
- CE_ヨーロッパ適合 (Conformité Européenne)
- EN_ヨーロッパ規格 (European Norm)
- EAC_ユーラシア適合マーク (EurAsian Conformity Mark)
- ANSI_米国国家規格協会 (American National Standards Institute)
- NFPA_米国防火協会 (National Fire Protection Association)
CE (Conformité Européenne)
CE規格は、欧州連合(EU)市場に流通する製品に適用される規格です。
CEは「Conformité Européenne(ヨーロッパ適合)」の略で、製品がEUの法令で定められた基準に適合していることを示すマーキングです。
EN (European Norm)
EN規格は、ヨーロッパ規格(European Norm)の略称であり、欧州規格機構(European Committee for Standardization, CEN)が策定した欧州の標準規格を指します。これらの規格は欧州連合(EU)だけでなく、EU加盟国以外の国々でも広く使用されています。
EAC (EurAsian Conformity Mark)
EurAsian Conformity Mark(EurAsian適合マーク、EACマーク)は、ユーラシア経済連合(Eurasian Economic Union, EAEU)加盟国で製品に表示されるマークです。EACマークは、製品がEAEUの技術規則に適合していることを示すものであり、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスタンの5カ国で使用されています。
ANSI (American National Standards Institute)
ANSI規格は、米国国家規格協会(American National Standards Institute)が策定する規格を指します。ANSIは、米国内外で使用される標準規格の開発と調整を行う非営利団体であり、幅広い分野にわたる規格を管理しています。
NFPA (National Fire Protection Association)
NFPA規格は、米国防火協会(National Fire Protection Association)が策定する防火・防災に関する規格を指します。NFPAは、火災およびその他の災害に対する予防、保護、対応に関する標準を開発し、普及・促進することを目的とした非営利団体です。
上記のような規格以外にも様々なものがありますが、この記事ではロープアクセスでよく目にするEN規格について解説していきます。
EN規格 ロープアクセス・高所作業
EN12841(下降器、ロープを調整する器具)
PPE against falls from a height.
DesceTlder device for rope access system and rope adjustment devices.
高所墜落防止個人保護用具。
下降器、またロープを調整する器具。
この規格は3種類のタイプに分類されます。
タイプA(バックアップデバイス) |
ユーザーの位置の変化を反映し、および/または安全ラインの調整を可能にし、静的または動的な荷重が加わったとき(落下時など)に自動的に安全ラインにロックする安全ライン用のロープ調整装置。 |
タイプB(アッセンダー) | 手動操作のロープ調整装置で、作業ラインに取り付けると、荷重がかかると一方向にロックされ、反対方向には自由にスライド可能。 |
タイプC(ディッセンダー) | 手動操作の摩擦ベースのロープ調整装置。ユーザーは、手をつかまなくても、制御された降下と制御された位置で特定の地点で停止可能。 |
EN341(下降器)
PPE against falls from a height.
Descender devices for rescue.
高所墜落防止個人保護用具。
レスキュー用下降器。
この規格では現在、ディセンダーを2つのタイプに分類しています。
タイプ1(自動下降) | 下降開始後にユーザーの介入を必要としないブレーキシステムが組み込まれた「自動」製品 |
タイプ2(手動下降) | ユーザーの操作が必要なブレーキシステムを備えた「手動」製品 |
また、デバイスが耐えられる降下エネルギーによって「A~D」のクラスに分類されます。
クラスA | 7.5 x 10の6乗 J |
クラスB | 1.5 x 10の6乗 J |
クラスC | 0.5 x 10の6乗 J |
クラスD | 1回のみの下降(下降エネルギーは最大下降高さと最大定格荷重によって異なります。) |
荷重テストでは、動的強度 (衝撃荷重に耐えるデバイスの能力の評価) と、静的強度 (一定荷重に耐えるデバイスの能力の評価) を行い、最低でも12kNの荷重で試験を行うように決まっています。
より詳細を知りたい方は、こちらのサイトを参考にしたのでご覧ください。
EN353(アンカーラインを含む誘導型墜落制止装置)
PPE against falls from a height.
Guided type fall arresters.
高所墜落防止個人保護用具。
墜落防止器具。
この規格は、2つのタイプに分類されます。
剛性のアンカーラインとは、ステンレスワイヤーなどの硬い素材のライフラインのことです。
柔軟なアンカーラインとは、ナイロンやポリエステルなどの柔らかい素材のライフラインのことで、アサップロックはタイプ2になります。
タイプ1 | 剛性のアンカー ラインを備えた誘導型墜落防止装置 |
タイプ2 | 柔軟なアンカー ラインを備えた誘導型墜落防止装置 |
EN354(ランヤード)
PPE against falls from a height.
高所墜落防止個人保護用具。
墜落防止器具とフォールアレストD環の距離が2m以内、かつ破断強度が22kN以上のコネクター
EN355(エネルギーアブソーバー)
PPE against falls from a height.
Energy absorbers.
高所墜落防止個人保護用具。
墜落防止器具と接続するエネルギーアブソーバー。
衝撃荷重6kN以下、伸び1.75m以下、破断強度15kN以上
EN358(ワークポジショニング)
PPE for work positioning and prevention of falls from a height.
Work positioning systems.
ワークポジショニング及びレストレイン用ベルト、ワークポジショニング用ランヤード
EN360(格納式墜落制止装置)
PPE against falls from a height.
Retractable type fall arresters.
高所墜落防止個人保護用具。
自動格納式墜落防止器具。
EN361(フルボディーハーネス)
PPE against falls from a height.
Full body harnesses.
高所墜落防止個人保護用具。
フルボディーハーネス。
EN813(シットハーネス)
PPE against falls from a height.
Sit harnesses.
高所墜落防止個人保護用具。
シットハ-ネス。
ワークポジショニングD環。
EN362(コネクター)
PPE against falls from a height.
Connectors.
高所墜落防止個人保護用具。
カラビナ。
B, M ,T, A, Qの5つのクラスに分かれています。
詳細はこちらのサイトをご覧ください。
EN397(ヘルメット)
PPE against falls from a height.
Industrial safety helmets.
高所墜落防止個人保護用具。
産業用安全ヘルメット。
以下の項目をテストする。
- 耐貫通性
- 衝撃吸収性
- 構造
- 耐火性
- あご紐の強度
- 通気孔の面積
- 側面への荷重に対する耐性
EN567(アッセンダー)
Mountain equipment.
Rope clamps.
登山器具。
ロープクランプ。
EN795(アンカー)
PPE against falls from a height.
Anchor devices.
高所墜落防止個人保護用具。
アンカー器具。
この規格では5つのタイプに分類される。
タイプA(例:クール) | 構造物に埋め込んで使用するアンカー |
タイプB(例:アノー、グリヨン) | 構造物に常設せずに使用するアンカー |
タイプC(例:グリヨン) | 柔軟な構造の水平ライフライン |
タイプD | 硬い構造の水平ライフライン |
タイプE | おもり式アンカー |
EN1496(レスキュー昇降装置)
Rescue equipment.
Rescue lifting devices.
レスキュー用器具。
レスキュー用リフティングデバイス。
この規格では2つのクラスに分類される。
タイプA | 救助用の個人装備の1つ。 自らを低い場所から高い場所に移動可能。 救助者によって持ち上げてもらうことも可能。 |
タイプB | クラスAと同様の性能に加えて、高所から低所への下降が可能であり、救助者によって降ろしてもらうこと可能。 |
EN1497(レスキュー用ハーネス)
Rescue equipment.
Rescue harnesses.
レスキュー用器具。
レスキュー用ハーネス。
レスキューハーネスは、通常は緊急時など、人を下ろしたり上げたりする必要がある場合に使用されます。
EN1891(セミスタティックロープ)
PPE against falls from a height.
Low stretch kernmantel ropes.
高所墜落防止個人保護用具。
ローストレッチ、カーンマントル構造。(セミスタティックロープ)
この規格では2つのタイプに分類されます。あくまで一例として破断強度のみを掲載します。
タイプA | 22kN以上 ノットなし 15kN以上 8の字結びで固定 |
タイプB | 18kN以上 ノットなし 12kN以上 8の字結びで固定 |
EN892(ダイナミックロープ)
Mountain equipment.
Dynamic (stretch) ropes.
登山用器具
ダイナミックロープ
この規格では3種類に分類されます。
シングル | リード/セカンドともに1本で使用できるロープ。 |
ダブル | リードの際は2本で使用し、2人のセカンドをビレイする際には1人につき1本で使用できるロープ。 |
ツイン | リード/セカンドに関わらず、常に2本で使用するロープ。 |
EN12278(プーリー)
Mountain equipment.
Pulleys.
登山用器具。
プーリー。
プーリーにはさまざまな形状、サイズ、シーブの数があり、さまざまな用途に使用できます。これらは主に、登山者を保護するためにロープやアクセサリー コードをコネクタに接続するために使用され、主な利点は、負荷がかかったときにロープを動かす摩擦の量を減らすことです。