無足場工法の定義
無足場工法とは、高所での作業や工事を足場を仮設せずに行う方法の総称となります。
ブランコ作業やロープアクセスのことを無足場工法としてプロモーションしている会社もありますが、こちらの記事では「いくつかある無足場工法のひとつとして、ブランコ作業やロープアクセスという方法がある」といった定義でご紹介していきたいと思います。
無足場工法の種類と特徴
- 高所作業車
10m〜12mクラス(マンション2階〜3階の高さ)で1日あたり4万円〜6万円のレンタル費用。10階建ですと40mクラスのチャーターが必要(オペレーター付きで30万円〜)。車両の設置場所を広く必要とし、敷地外では基本的に道路使用許可申請が必要。 - ゴンドラ作業
基本料金プラス利用損料、仮設と運搬代金(往復)が別途必要。ある程度の期間、据え置くような工事の場合コストメリットが高くなる傾向があるが、架け替えが必要な場合など仮設費用がかさむこともあるでしょう。 - ブランコ作業
従来から高所作業で活躍してきた作業方法。現場リスクが高かったため、2016年に厚生労働省が労働安全規則を改正。品質管理と安全対策がむずかしい面を持ち、作業効率があまり良くないため工期が長くなる可能性がある。 - ロープアクセス
ヨーロッパの生産工場や工業施設で発展した技術。厳格な欧州の安全基準に準拠したロープアクセスは大手ゼネコンでも認可されるようになりつつある。超高層ビルや狭小地でも対応可能だが運用できる業者がまだまだ少なく品質管理がむずかしいのはブランコと同じ。比較的新しい工事方法で対応業者がまだまだ少ない。 - 梯子(ハシゴ)
基本的には昇降設備と思ってください。設置角度75度や上部突出は60cm以上、上下固定必須など各社規制ルールあり。作業をするのに向いていませんし、物理的に大変危険でゼネコンなどでは原則使用禁止になっています。ホームセンターで購入でき、敷居が低いため安全対策が至らず重大事故になるケースも多い。
無足場工法が活躍するケース
無足場工法が活躍する主なケース以下になります。
- ピンポイント補修工事や小規模な改修工事
- 部分的な点検や事前調査
- テナント営業や住民への影響を最小限にしたい工事
- 足場の仮設がむずかしい狭小地
- 高層建造物などの上層での工事
- 緊急案件
ピンポイントな補修工事の一例としてマンションの竪樋補修や漏水補修などで無足場工法は大いに活躍することができます。マンションの10階部分の窓に近づくために、1階から10階まで足場を仮設するよりも屋上スペースから支点を取り、ぶら下がって作業する方が効率が良いですね。
また足場の仮設と撤去で1日ずつ必要とすると、作業日を含めてどんな軽微な工事でも2〜3日程度かかりますが、無足場工法であれば作業日のみ1日の工事で完了。足場の仮設工事代金を必要としないため、作業工賃が割高でも総工事費用を抑えることができるでしょう。
足場の仮設を必要としないメリットは、緊急的な工事案件にも当てはまります。今にも落ちてきそうなタイルを撤去するのに、フットワークの軽い無足場工法は迅速な対応をすることが可能です。(危険度によりできる限りご対応いたしますが、ご期待に沿えない場合もあります)
近年、ビルが建ち並ぶ東京などの都会において無足場工法の需要が、より一層高まっています。
無足場工法の施工例
私たちは、無足場工法の中でもロープアクセス専門として多くの工事をしております。ロープアクセスによる無足場工法が活躍したいくつかの例を紹介させてください。きっと参考になるはずです。
無足場工法が苦手なこと
無足場工法は横移動が苦手
無足場での作業は、地上や足場での作業と比べると足を使って横に移動したり踏ん張ることが苦手で作業の効率が落ちます。横に移動する際には、それぞれ掛け替えや移動が必要なため手間と時間を要します。
無足場工法の中では、仮設が比較的かんたんなブランコやロープアクセスが優位になる状況も多いはずです。とりわけロープアクセスには、ロープから隣のロープに安全に移る技術がありますので、機動性が高い方だと言えます。
作業範囲の広い大規模な改修工事では、足場を仮設した工事の方が作業効率が良いためコストメリットが高いと言えるでしょう。
無足場工法は天候に左右されやすい
無足場工法の中でも、ゴンドラ作業やブランコ、ロープアクセスは風の影響を受けやすいため強風時の作業は原則禁止です。風速が10m/秒を超える場合の作業は、法令で禁止されています。高所作業(2m以上)において、労働安全衛生法で以下の条件が基準として設定されています。
– 強風(10分間の平均風速が10m/秒 以上)
– 大雨(1回の降雨量が50mm 以上)
– 大雪(1回の降雪量が25cm 以上)
強風に関して、地上が穏やかな風でも高所では強く吹いている場合がありますので注意が必要です。
無足場工法と足場作業のハイブリット
小規模な工事では、無足場工法の方が足場を仮設する工事より費用が抑えられる傾向があると言えますが、その境目はあいまいです。
近年では、足場の仮設をした方が効率が良い作業と、無足場工法で作業した方が効率が良い工事のお互いをメリットを活かしたハイブリットな工事現場も見受けられます。その理由として一面のみ狭小であったり、足場の仮設がむずかしい建物形状など様々です。また、テナントへの影響を小さくしたい、近隣住民に対する配慮なども含めると柔軟に対応できるハイブリットな工法がベストな選択と言えるでしょう。
こういった事例もあり、無足場工法の活躍の場は今後さらに増えていくと予想できます。
まずは作業内容に無足場工法があっているかを検討することが大事です。ご不明な点など、ぜひお気軽にお問合せください(現場の写真などありますと大変スムーズです)