Skip to content
ロープアクセス専門|無足場の高所作業は株式会社4Uにおまかせ!
全国出張可能
営業時間9:00〜18:00

はじめに – なぜ私はここに来たのか

私がこの講習に参加したきっかけは、仕事での経験と興味の延長にある。

ロープ高所作業という現場では、常に安全を最優先に行動し、自分の命、そして仲間の命を守ることの重要性を日々実感している。その流れで、レスキューの知識や技術にも少しずつ興味を持つようになっていた。

社内で新規プロジェクトが立ち上がり、現場に安全管理者として赴く機会が増える中で、「現場で役立つ知識を一つでも多く学び、持ち帰りたい」――そう思い、今回のWAFA受講を決めた。

※WAFA(Wilderness Advanced First Aid)とは、救助がすぐに来ない大自然や災害時など、医療アクセスが限られた環境下での救命救急法(野外・災害救急法)のこと。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_11

震災遺構との対面 – 15年越しの現実

対面セッション初日の朝、運営チームと共に震災遺構の下見に出かけた。

岩手県に足を踏み入れるのも、震災遺構を見るのも、人生で初めてのことだった。目の前の建物がどういうものか説明されても、正直なところ実感はまるで湧かなかった。

かさ上げされた広大な平地に、ポツンと佇む「米沢商会」と書かれた建物。その壁には、当時の津波の爪痕が今もはっきりと残っていた。風が冷たく、静寂の中に立ちながら平野を見下ろしていると、過去の喧騒が幻のように浮かんでくるような感覚があった。

都内で暮らしていた私にとって、2011年3月11日に起きた東日本大震災は、テレビの中の出来事だった。

海外のニュース映像と、さほど変わらない距離感で眺めていた。

当時の被害の大きさも、被災者の方々が経験したことも、想像することすらできていなかった。――目の前に広がる現実が、そのことを静かに突きつけてきた。

被災地という場所が、学びの意味を変えた。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_10

受講前夜 – 不安という名のノイズ

受講前、事前学習資料を目にした瞬間、強烈な場違い感に襲われた。「本当に私みたいな人間が行っていいのか?」「医学の勉強もしていない素人が、傷病者を前にしたとき、何ができるのか」――胸の奥がざわつき、息が詰まるような不安でいっぱいになった。

事前学習を進めても知識が頭に入ってくる実感はなく、資料を読めば読むほど、不安だけが積み上がっていった。

対面セッション初日、受付を済ませて教室に集まった受講者の顔が、とても印象的だった。

持ち寄った資料を読み込む姿、真剣な表情でノートを取りながら話を聞く姿。「この人たちは本気で資格を取りに来ているのに、資料を見ただけで押し潰されそうな人間がここにいていいのか」と、自分の無力さをひしひしと感じた。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_03

フィールドワーク – 思考の甘さと向き合う時間

午後から始まったフィールドワークでは、傷病者役と救助者役に分かれ、実践的な訓練に取り組んだ。傷病者の評価や手当、包帯やスプリントによる固定を行いながら、状況把握と判断の重要性を体で学んでいく。

フィールドに倒れた傷病者を想定したシナリオでは、まず「現場にどんな危険が潜んでいるか」を考え、優先順位を決める必要があった。しかし正直なところ、状況の評価が十分にできず、何を優先すべきか迷う場面が何度もあった。

インストラクターの方たちは私たちの目線や動きを鋭く観察し、思考の甘さをズバリと指摘してくれた。「この状況で最も優先すべきことは何か」「どうすれば自分の安全を確保しながら動けるか」――問いかけられるたびに、自分の思考力・想像力の浅さにハッとさせられた。

それでも、その場で仲間と声を掛け合い、改善点を共有し合いながら、少しずつ学びを深めていった。

それぞれの視点から見えたこと・感じたことを話し合う中で、「一つ一つ積み上げられている」という実感が湧いてきた。「大丈夫。ちゃんと成長できている」と、心がほんの少し軽くなった。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_05

チームで動く難しさと、言葉以上の一体感

チームでの動きも、簡単ではなかった。リーダーの指示は「誰でも分かる」「正しく理解できる」ように、簡潔で明確でなければならない。でも実際にそれができるかというと、なかなか難しい。

小声で話す仲間へのフォロー、全員が同じ理解に立てるような言葉の選び方と順序。そのわずかな違いで、動きがスムーズになったり、逆に混乱が生まれたりする。

初めは手順が頭に入っていても体が思うように動かず、焦りで胸が苦しくなる瞬間が何度もあった。

それでも経験を重ねるうちに、判断や動作が少しずつ体に染み込んでいった。ペアやチームで協力してうまく対応できたとき、達成感と小さな自信を味わうことができた。

仲間の声・考え・動きがリンクする瞬間には、言葉以上の一体感があった。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_02

最終日 – 積み上げたものを、あの場所で

最終日には筆記テストを終えた後、旧米沢商会ビルで最終シミュレーションを行った。

自分たちでリーダーやルールを決め、傷病者救助に向かう。仲間の動き、傷病者への対応を見ながら、「それぞれがこの3日間で積み上げてきたものが、ちゃんと発揮されている」と強く実感した。

講習の最後に、旧米沢商会ビルのオーナーである米沢さんから、震災当日の話を伺う機会があった。

建物の床や柱に残る津波の跡を前に、当時の惨状を想像すると、言葉が出てこなかった。

15年経って初めて、「3.11が本当に日本で起きた震災である」ということが、現実として心に刻まれた気がした。画面越しではなく、目の前にある建物、土地、そして人の記憶が、言葉以上の重みで胸に響いた。

日本は震災大国だ。

大切な人や自分自身を守る術を身につけておくことの重要性を、改めて痛感した。起きてから動くのでは遅い。今、自分に何ができるかを考え、行動に移すことの大切さを、この地で深く感じた。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_01

この3日間が、私に残したもの

この3日間の体験を通して、知識や技術だけでなく、心構えや防災意識が少しずつ自分の中に積み上がった。

まだ生活や仕事でどう活かせるかは模索中だが、「備えること」と「行動する勇気」の大切さを肌で学んだ、かけがえのない体験になった。

特にロープアクセスの現場では、高所での作業や、限られた人員でのレスキュー対応が求められることがある。

今回学んだ状況評価の考え方、指示の出し方、チームでの連携の重要性は、そのまま現場の安全管理に活かせると感じている。

困難な状況でも焦らず判断できる自分になること――それが自分自身の成長であり、仲間の安全につながると信じている。

野外救急法 - 国際資格WAFAの3日間_07

ロープ業界で働く仲間へ

私たちの現場は、常にリスクと隣り合わせだ。

高所、荷重、天候、そして人。どれ一つとっても、油断は許されない。でも「いざというとき」の準備を、どれだけの人が本当にできているだろうか。

陸前高田という場所で学んだことは、技術や手順だけじゃない。「想像すること」「声を出すこと」「仲間と動くこと」――そのすべてが、命を守るための力になるということだ。

ロープ高所作業に携わる者として、レスキューや救急の知識は決して「特別な人のもの」じゃないと、今は確信している。

学ぶことへのハードルが少しでも下がって、現場で動ける人が一人でも増えたら――この体験リポートが、そのきっかけになれたら嬉しい。

大学サッカーを卒業後、インストラクターを経て、ゴンドラ会社に就職。現場管理の経験を積み、ロープの職人となる。 第一線で活躍する女子として貴重な存在。 現場全体を見渡し、先を読んだ動きが出来る、まさにチームを支えるボランチだ。

Back To Top