ーまだ道の途中、それでも前へ進む理由ー
第十四章:業界の未来のために
2025年。
もうひとつ、大きな取り組みが動き出していた。
前年に設立した
日本ロープ高所作業協会。
それは、
かつて解散という選択をした前身の団体の想いを、
形を変えて受け継ぐ挑戦だった。
一年間、まずは拡大を急がず、
中身を作ることに徹した。
何のための団体なのか。
誰のために何をするのか。
何度も話し合い、準備を重ねた。
そして、2025年の春。
いよいよ会員募集を開始。
RWCの有志がすぐに反応してくれた。
しかし、
この協会に入会するメリット今は何もないと、
私ははっきり言った。
それでも、
この業界のために貢献したい、
その思いで、
正会員・賛助会員を合わせて
140社を超える仲間が集まっていた。
あっという間に、
日本最大規模のロープ団体となっていた。
この協会の目的は、
極めてシンプルだ。
ロープ業界の労働災害を防ぐこと。
人材育成と、安全向上に努め、業界として成長すること。
そして、
これまで「ニッチ」と言われ続けてきた
ロープという仕事を、
社会に認識してもらうこと。
国に認められる、
ひとつの“業界”として、
しっかりと根を張らせること。
私たちは特別なことをやりたかったわけじゃない。
この仕事が好きから、
いい会社にしたい。
いい業界にしたい。
みんなで豊かになりたい。
ただ、それだけだった。
この業界には、
挑戦する人たちがいる。
前を向き続ける人たちがいる。
彼らの姿は、
誇らしく、
かっこよく、
気持ちがいい。
だからやる。
彼らのために、
そして、世界に誇れる日本のロープ業界をつくるために。
⸻
第十五章:安全という原点
2024年の暮れ、
一通のメールが、
大きな転機をもたらした。
数年間、海外で経験を積んだロープワーカーが、
日本に帰ってくるという。
私は彼を、RWCの講演に講師として招いた。
海外のロープ業界事情。
そのカルチャーや資格制度や現場の様子など。
どれも刺激的で、
目が覚めるような話だった。
同時に、
自分たちの足元を見直すきっかけにもなった。
4Uの現場にも来てもらい、たくさんのフィードバックをもらった。
このおかげで社内の安全管理が大きく変わることになる。
過去にも立ち上げたことがあった安全管理委員会は、
十分な成果を出せないまま消滅していた。
あの時はタイミングが早すぎた。
やるなら今だ。
私たちは再び、
社内に安全管理委員会を立ち上げた。
ロープアクセスの前に、高所作業としての安全管理をするべき。
それが国内のロープ業界に抜けている。
本当は安全管理の延長線上に、
ロープアクセスがあるのだ。
2025年4月、
海外にも劣らない独自の安全管理システムを構築した。
法人設立から10年、
ずっと理想を描いていた「安全の仕組み」が、
ようやく形になった瞬間だった。
問題は個人の資格ではない。
技術共有とチームビルディング。
仕組みとそれを守る風土。
それが重要なのだと、
私たちは証明できた。
⸻
第十六章:工事部隊の昇華
私たちはロープワーカーであり、
建設職人でもある。
求められるのはロープだけではない。
施工技術も持ち合わせていないと、
信頼は得られない。
ロープと施工。
両方を磨くことが、
本当の価値につながる。
そして驚くべきことに若手を中心に、
工事課内に品質向上委員会が発足した。
施工品質を上げるための練習架台や設備を倉庫に整え、
練習をした。材料を学び、施工技術を高め合った。
熟練の職人を講師に招いた講習会やメーカー講習会も開催した。
そして、
シーリング技能士の資格に挑戦。
社内で5名、協力業者で3名。
一級シーリング技能士が誕生した。
技能士への挑戦はその後も続いている。
道具に関しても、業界にないものは自ら開発した。
落下防止用のバケット「受け取る君」
飛散防止メッシュのブラケットや固定クランプ、
それらはRSP工法として、海外からも問い合わせが来た。
他にも、リギングフレームやロープガード、
ツールバッグやギアポーチ、
ロープワーカーウェアもオリジナルで開発し、
作業着ブランドTSデザインともコラボした。
常に現場ファーストの精神で、
無いものは作る。
そうして道を切り開いてきた。
⸻
第十七章:世界を知り、日本を考える
2025年は、
久しぶりに海外へ足を運ぶ年にもなった。
台湾、韓国、インドネシア。
現地のロープ会社を訪問し、
街中で作業するロープワーカーを探した。
海外のロープ関係者は皆温かくおもてなしをしてくれた。
貴重な情報交換をたくさんできた。
どの国も、
日本以上に資格やトレーニングが
しっかり運用されていた。
日本では、一日の特別教育で
ロープ作業ができてしまう。
そんな国は、他にほとんどない。
多くの国では、
一週間程度のトレーニングが
当たり前だった。
海外を知るほどに、日本国内の制度を
見直す必要性を感じた。
そして海外のルールに左右されない、
日本で運用できる仕組みも必要だと感じていた。
⸻
第十八章:遊び心も、仕事のうち
2025年はもうひとつ、
面白いトピックがある。
AIに4Uの理念を読み込ませ、
会社の歌を作ったのだ。
その出来栄えは、想像以上だった。
「これをバンドでやろう」と決めた。
音楽経験者の社員に声をかけ、
ボーカルには、音楽未経験の社員を抜擢した。
仕事終わり、
会議室に作った簡易スタジオで練習をした。
忙しくて全員が揃うときは少なかったが、
ついに曲は完成した。
そして目標としていた、ミュージックビデオの撮影をした。
最後までなんとかやりきることが出来た。
おそらく、
本邦初の、ロープワーカーによるバンドソングになると思う。
動画公開は、
2026年の初めを予定している。
仕事も、遊びも、本気でやるから楽しいのだ。
⸻
終章:私たちの誇り
会社は10年目を迎え、
今も、私たちは挑戦の真っ只中にいる。
常に問題は起きる。
壁はいつも立ちはだかる。
それでも、
最善を尽くし、
仲間と共に進んでいく。
4Uの理念は、
独創的なアイデアで挑戦を続けること。
ビジョンは、
ロープアクセスの新時代を想造すること。
そして今、
これまで以上に大きな挑戦も始まろうとしている。
私たちは立ち止まれない。
このロープの先には、
まだ誰も見ぬ、
もっと素晴らしい未来があるから。
最後に、
ここまでを振り返れば、いろんなことがあり、
常に挑戦の連続でした。
数々の困難を乗り越えて来れたのは、
現場の最前線に、
いつもあきらめずに戦い抜く職人たちがいたからです。
そしてその時々で力を貸してくれた全国の仲間たちがいたからです。
心からの感謝と、この絆を胸に、
私たちはこれからも、このロープの道を進み続けます。
誇りと共に。
ONE ROPE & STAY SAFE
株式会社4U
代表取締役 上田雅人

