ロープアクセス(ブランコ作業)による塗装、防水、調査を専門としている株式会社4Uです。
弊社は関東を中心とするビルやマンションの無足場工事の依頼だけではなく、最近では橋梁、工場・プラント、風車など、ご依頼いただく幅は広がっております。
その中でも今回は、「外壁の打診調査」に焦点を当ててお話していきます。
外壁調査は義務付けられている?
外壁打診調査とは、その名の通り、外壁を専用の道具で叩くことで損壊の度合いを調査することです。
この調査の目的は歩行者の安全を守るためであり、調査報告を怠ると、罰金が課せられる恐れがあります。
では、外壁打診調査は義務付けられた、絶対に行わなければならない調査なのでしょうか。実際のところ、必ずしもそうというわけではありません。
外壁調査の対象建築物
まず、建物には定期的な調査の報告を必要とする「定期報告対象建築物」というものがあります。
この建築物の基準は、建築基準法と県建築基準法施工細則という二つの法によって制定されているため、県ごとに対象となる建物が微妙に異なります。
基本的には、以下のような建物が定期報告の対象に選ばれます。
- 劇場や映画館
- 旅館やホテル
- 学校
- 病院
- デパートや百貨店
- 一定規模を超えるマンンションなど
また、定期報告の対象に選ばれていたからと言って、すぐに外壁打診調査をする必要が出るというわけではありません。
調査を実施しなければならない条件
外壁打診の調査は、2つの条件に当てはまって始めて必要になります。
- 竣工や外壁改修から10年以上経過
- 3年以内の定期報告までに外壁改修等を行う予定がない
もちろん、手の届く範囲の調査や目視の調査などで異常が見つかった場合は早急に打診調査する必要が出てきます。ですが、基本的に、条件を満たさない建物は打診調査を行わなくても問題ありません。
つまり、打診調査の義務は建物の種類、条件によって変わるため、絶対ではないという事です。
とは言え、調査を実施することで劣化度合いを知ることができるのは大きなメリットです。
調査結果に応じ適切な修繕を実施することは、建物劣化に伴う事故の未然予防になります。適時に修繕を実施することで将来的なコストを抑えることにもつながり、建物の管理者にとって大きなメリットです。
また、調査の報告書は、外壁の劣化に伴う事故が発生してしまった際の重要な資料となります。
開口隅部、水平打継部、斜壁部等のうち手の届く範囲をテストハンマーによる打診等により確認し、その他の部分は必要に応じて双眼鏡等を使用し目視により確認し、異常が認められた場合にあっては、落下により歩行者等に危害を加えるおそれの部分を全面的にテストハンマーによる打診等により確認する。ただし、竣工後、外壁改修後若しくは落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的なテストハンマーによる打診等を実施した後10年を超え、かつ3年以内に落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分を全面的にテストハンマーによる打診等により確認する(3年以内に外壁改修等が行われることが確実である場合又は別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合を除く)。
(引用:国土交通省告示第282号)
外壁調査の必要性
外壁調査とは、建物の劣化調査の1つです。建物の外壁は日光・雨・風などで経年劣化します。そのため、外壁の劣化度合いを定期的に調べる「外壁調査」が必要です。
外壁に関するトラブルの種類には、ひび割れ、外壁表面に白い粉が浮き出てしまう白華(はっか)現象、タイルの浮きなどがあります。これらの現象が発生していないか、また、発生しているのであればどの程度の修繕が必要なのかを調べるのです。
オーナーの賠償責任と罰則
特にタイル浮きを放置してはいけない最大の理由は、人身事故や物損事故につながるリスクがあるためです。タイルの落下によって歩行者がけがをした場合、オーナーはその賠償責任を負う必要が発生します。
さらに、タイル浮きの点検については罰則が設けられた法律が定められています。建築基準法の12条で、「落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分」を全面的に打診等により調査をしなければならないと規定されております。
点検を怠った場合に課せられる罰則は特にありませんが、問題はタイルが実際に落ちた場合に罰則が生じるということです。
点検の審査は厳しく、袖看板などの細かい部分も点検しなければいけないなどがありますが、ほとんどのオーナーは12条の点検内容を細かく熟知していないので、防げたかもしれないのに賠償だけでなく罰則を背負ってしまったという例も存在するのです。
このようにあらゆる点でタイル浮きの調査は歩行者だけではなく、オーナーとしての社会的立場を守ることにつながるということが分かります。また調査によって不具合を早期発見することで、建物の寿命を伸ばすことも可能ですのでタイル浮き調査は行うべきであるといえるでしょう。
外壁タイルが落下する原因
タイル落下による危険性はご理解いただけたかと思いますが、そもそもなぜタイルは落下するのでしょうか?
それは、タイルが「浮く」からです。
「浮く」というのはタイル自身とタイルが貼り付いている壁の間に隙間ができている状態です。
では、なぜ隙間が生じてしまうのでしょうか?
それは、以下のような要因が複合的に作用しているためです。
経年劣化
コンクリートやタイルは劣化すると付着力が低下するという特徴があります。そのため、長い期間タイルを放っておくと、コンクリートやタイルが劣化に耐えられず浮いてしまうことがあります。
新築時の施工不良
外壁にタイルを貼る作業ではタイルの下地の躯体(コンクリート)成形の中でコンパネ(型枠)にコンクリートを流し込む作業があります。その時にコンパネに離型剤を塗り後でコンパネを剥がしやすくします。コンクリート側にも離型剤が残るため、ケレンや超高圧洗浄で洗い流します。ですが、10〜15年ほど前は離型剤を剥がさない施工が広まった時期がありました。こうした工事によって、のちにタイルが浮いてしまっていることが昨今起きています。
温度差
タイルは日々の温度変化によって下地モルタルが熱膨張と収縮を繰り返すという特徴があります。磁器タイルとコンクリートの間にも熱により伸縮係数の違いが生じるため、こうした温度差からタイルに浮きが生まれてしまいます。
湿度差
シーリングは水を吸水してしまうと、その吸水により膨張や乾燥することによって収縮をしてしまいます。こうした膨張・収縮の繰り返しも、タイルの付着力の低下や浮きを作る原因となるのです。また、コンクリートは施工したばかりは水分を含んでいますが、この水分が抜けていくと収縮を生み、タイルが割れる原因になってしまいます。特に窓の四隅はもっとも収縮の影響を受けやすいので、割れ・浮きが発生しやすい傾向にあります。
寒暖の差が発生しやすいという点で、日の当たりやすい東側に張られたタイルも膨張しやすいという特徴があります。
地震
地震など、地形を変化させる自然現象は、時に建物の変形を生み出します。そうした建物の変形にもタイルの付着力は影響を受けやすく、付着力が低下したことにより浮いてしまうというケースがでるのです。
凍結・融解
ひび割れ部分へ水分が侵入すると、その水分はひび割れの中で凍結と融解を繰り返します。こうした水分の動きはタイルの膨張・縮小を同時に生み出してしまうため、それにより付着力が低下して、タイル浮きが生まれてしまいます。
鉄筋の被り厚さ不足
鉄筋からコンクリート表面までの厚さが足りないと、鉄筋には錆が発生してしまいます。その錆は膨張することにより表面の層、つまりコンクリート躯体と仕上げ層を押し上げてしまうため、それがタイルの浮きの原因になるというケースがあります。
タイル浮き補修の目安
では、どのくらいタイルが浮いていたら補修する必要があるのでしょうか?
タイル浮きを調査する際に基準となるのが『浮き率』です。
浮き率とは、建物のタイル全体のうちどのくらいの比率のタイルが浮いてしまっているか(一部或いは全面が下地に接着していない状態)を割合化したものです。
一般的には築年数×0.6がタイル浮き率の目安とされ、これを超えると補修の必要が出てきます。
築年数10年、全タイル数1万枚の建物の場合、
10 × 0.6 = 6
つまり、タイル1万枚中の6%にあたる600枚を超えていると補修の必要があるということです。
外壁調査の種類
タイルの浮きは、ドローンによる赤外線調査と、人が専用の道具で叩く打診調査する2種類の方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
弊社では主に打診調査を採用していますが、赤外線調査も提携したドローン会社と共に行っています。
赤外線調査
赤外線調査とは、地上から赤外線カメラで外壁を撮影したり、近年では赤外線カメラを搭載したドローンで撮影する方法も広まってきました。
赤外線は撮影された熱分布画像を解析していくことでタイルの浮きの原因になる温度差がみられる箇所を探します。
打診調査と比較すると、この方法はコストの点で優れている傾向があり、徐々に外壁の調査において広まりつつあります。ただし、調査の精度の高さは依然として打診調査の方が高い傾向にあります。
赤外線調査では撮影用のドローンが飛ぶためのスペース(5メートル程度)、適切な温度が必要など調査を行うための条件がいくつかあります。
そのため、ドローン赤外線調査法と合わせて、狭い場所でも動けるロープアクセスによる打診調査法を行うという調査を取っているケースもあります。
打診調査
打診調査では打診棒でタイルを叩く(転がす)調査方法が一般的です。
タイルを叩いたときに出た音や感触の違いから業者はタイルの浮きや不具合を調査していきます。
打診調査には弊社の得意とするロープアクセスが力を発揮します。特にコストの点では、打診調査のために足場を組むのはコストがかかりすぎて非現実的です。また、足場の設置・解体がないため短期間で調査を実施することが可能です。
足場は建物全体の改修工事などの広範囲の工事かつ、同じ場所に留まって作業する工事で最大限力を発揮でき、逆にそういった場面ではロープアクセスは適していません。
打診調査が必要な外壁の種類
打診調査が必要な外壁は基本的にタイル張りと石張り(湿式)の2つです。
石張りの外壁には乾式と湿式という工法があります。 湿式は石の内側に漆喰やモルタルなどを埋めてつなぎ留める工法です。 乾式は、石の内側が空洞となっていて、その内側から金具で吊り下げたり、引っ張ったりして留める工法です。 つまり石張りの乾式は、元から中が空洞なので打診調査の意味がありません。
他の素材を使った建物の外壁での調査はしなくて良いのかと疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、法令上でも、10年に1度の外壁点検を求めているのは、今のところはタイルと石材によるものです。
そのため、この2種以外の建材による外壁の点検は、現段階では必要ありません。
外壁打診調査の方法
外壁を打診によって調査する方法はいくつかあります。
先ほどロープアクセスが出てきましたが、ロープアクセスを含めて他の方法についてもご説明いたします。
足場
この方法では外壁の周りに仮設の足場を設け、それに乗った状態で作業を行います。
足場の設置には組み立てや撤去作業も含め、かなりの時間と費用がかかります。この方法は大規模な工事や建築物で優れています。
ロープアクセス(ブランコ作業)
ロープアクセスでは厳格な基準をパスした産業用のロープを屋上から垂らし、それを伝って外壁を移動し、調査を行います。
この作業は統一されたマニュアルによる高い安全性を元に行われており、同時に弊社の最も得意とする方法でもあります。
この方法は足場を立てる必要がないだけではなく、道路使用許可や道路占有許可などの申請許可も必要ありません。そのため、非常に早く、安価に調査を行えるという強みがあります。しかし、建物の規模や形状によっては他の方法よりも高価になってしまうケースもあります。
高所作業車
高所作業車では、その名の通り車の荷台に取り付けられた高所作業用のプラットフォームに乗り込み、調査を行います。
この方法では屋上に設備をする必要がなくなりますが、道路使用許可証や警備員、オペレーターの人員などと、必要な要素が多くなるためコストは高くなります。また、建物が狭い道沿いに囲まれている場合は、そもそも作業自体が行えなくなります。
ゴンドラ
ゴンドラは建物の屋上に吊元を作り、専用の架台を設置します。作業員はそこから吊り下げたケージという箱に乗り、調査を行います。ゴンドラはリモコンを利用して上下移動を行うため、効率性に優れており、都心の歩行者が多い地域で採用されがちです。
しかし、専用の設備が多い分コストがかかりやすく、強風などの風に弱いというデメリットも存在します。さらに、道路使用許可や道路占有許可も事前に取得しておく必要があります。
ロープアクセスによる外壁調査費用
では、実際に調査に取りかかるとして、かかる費用はどのような内訳になるのでしょうか。ロープアクセスで打診調査をすると仮定します(弊社がロープアクセス会社のため)。
- タイル打診調査費:250円~ / m²
- 塗装面の浮き・ひび割れの調査:200円~ / m²
- 報告書作成:50~100円 / m²
これにロープ仮設費、別途の諸経費を含めて、全体的な打診調査の費用が決定されます。 また、地上警備員を付ける場合はこれらとは別の費用になります。
建物によって金額が大きく変わってしまうため、具体的な金額が知りたいという方は、お見積もりは無料ですのでお気軽にお問い合わせください。
また、タイルの剥落などによる緊急対応にも可能な限り対応いたしますので、そのような場合もお気軽にお問合せいただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
Comments (2)
Comments are closed.
[…] 外壁タイル調査は義務?必要性や調査方法・費用など徹底解説! […]
[…] 外壁タイル調査は義務?必要性や調査方法・費用など徹底解説! […]